建築士が解説!シラス壁が優れている理由

2025/10/24(金) シラス壁コラム


はじめに

家づくりを考えるとき、多くの人がまず気にするのは「外観」や「間取り」ではないでしょうか。
でも、実際に暮らしてみてその家の「快適さ」を決めるのは、空気と温度と光
そして、それらに深く関わっているのが“壁”です。

近年、建築士や設計者のあいだで注目を集めている素材があります。
それが**「シラス壁」**です。

シラス壁は、自然素材でありながら高い機能性を持ち、住宅の“空気環境”を根本から変えるといわれています。
今回は、建築や素材の専門的な視点を交えながら、なぜシラス壁が優れているのか、その理由をわかりやすく解説します。


シラス壁とは?建築士の視点で見た“自然の素材”

まずはシラス壁について簡単におさらいしましょう。シラスは火山噴火でできた火砕流堆積物を原料とした素材で、細かな穴が無数にあるのが特徴です。この構造によって、空気清浄や湿度調整など、暮らしを快適にする働きがあります。健康住宅の素材として注目されていますが、それだけでなく「見た目の美しさ」も北欧インテリアとの相性を高めているのです。

「シラス」とは、九州南部に広がる火山噴出物のこと。
およそ2万5千年前の噴火で流れ出した火山噴出物が、長い年月をかけて風化し、細かく柔らかな粒子になったものです。

そのシラスを主原料にしたのがシラス壁
化学的な樹脂や接着剤を使わず、自然のままの素材を塗り重ねて仕上げます。

建築士の目から見ると、この“素材の純粋さ”こそが最大の特徴です。
工業的に作られた壁材にはどうしても「混ぜ物」が多く、それが時間の経過とともに劣化や変色の原因になります。
一方、シラス壁は素材そのものが安定しているため、年月が経っても風合いが保たれやすいのです。


化学物質に頼らない“クリーンな室内空気”

建築の世界では、いま「健康」と「安全」を両立する建材が強く求められています。
新築やリフォーム直後に頭痛や喉の痛みを感じる人がいるのは、壁紙の接着剤や塗料から放散される**VOC(揮発性有機化合物)**が原因とされています。

そのため、国土交通省や厚生労働省は「シックハウス対策」を義務化しており、建材の使用制限や換気設備の設置を法律で定めています。
(出典:厚生労働省「室内空気中化学物質に関する指針値」

シラス壁は、こうした化学物質を含まない自然素材。
新築特有のツンとした臭いがなく、施工後すぐに安心して暮らせるのが魅力です。
特に小さなお子さんやアレルギーを持つご家族から、「空気がやさしい」と評価される理由もそこにあります。


“呼吸する壁”がつくる自然な湿度バランス

壁は単なる仕切りではありません。実は、室内環境の「調湿」を支える大切なパーツです。

シラス壁の表面には、目には見えない無数の小さな孔(あな)が空いており、空気中の水分を吸ったり吐いたりしてくれます。
この呼吸する仕組みによって、室内の湿度が自然に整うのです。

たとえば梅雨時期。
通常のクロス壁では湿気がこもってカビやすくなりますが、シラス壁なら余分な水分を吸収してくれるため、空気がベタつきません。
逆に冬の乾燥時期には、水分をゆるやかに放出してくれるため、肌や喉にもやさしい。

人工的な加湿器や除湿器に頼らずとも、自然の力で“快適な湿度”を保てる壁材なのです。


光をやわらかく反射する、空間デザインの魅力

設計者に喜ばれるのは、シラス壁が光をとてもきれいに扱う素材だという点です。

壁の表面はややざらついた質感で、細かな凹凸があります。
この凹凸が光を乱反射させ、直射光でもギラつかず、やわらかい明るさを部屋全体に広げてくれます。

シラス壁の明るさは、照明器具では作れない“自然の光”のような質感。そこに暮らす人の表情までも柔らかく見せてくれます。


メンテナンスのしやすさと耐久性

自然素材の壁というと、「汚れやすいのでは?」と心配する方もいます。
しかし実際には、シラス壁はとても長持ちします。
なぜなら、シラスの粒子自体が無機質(火山由来の鉱物)で、紫外線や熱、湿度の変化に強いからです。

一般的なビニールクロスは10年ほどで継ぎ目が目立ち、張り替えが必要になるケースが多いのですが、シラス壁は塗り直しの必要がなく、20年以上使い続けても風合いが保たれる例も珍しくありません。

小さな汚れなら、消しゴムやメラミンスポンジで軽くこすれば取れることも。
経年変化も「味わい」として楽しめるのが自然素材ならではの魅力です。


防火・防臭・抗菌性能という“見えない安心”

シラス壁は火山噴出物が原料。つまりもともと焼かれた素材です。
燃えることがなく、熱に強い。万が一の火災時にも、有害ガスを発生させないという特性があります。

さらに、においや有機物を吸着・分解する性質を持つため、ペットや料理のにおいがこもりにくいという声も多く聞かれます。

また、最近の研究では、シラスに含まれる非晶質(アモルファス)成分が触媒的な反応を示し、環境によっては抗菌・抗ウイルス効果を持つ可能性も報告されています。(参考:空気科学住宅「シラスの可能性・最新研究」より)

つまり、見えない部分でも“空気を守る壁”としての力を発揮しているのです。


建築士がすすめる「シラス壁が合う家」

すべての家にシラス壁を使えばいいというわけではありません。
ただし、建築士がおすすめするのは、以下のような方々です。

  • 小さな子どもやペットがいる家庭
  • 湿気の多い地域、カビや結露が気になる家
  • 化学物質やにおいに敏感な方
  • 光と自然を感じるインテリアを好む人
  • 長く住み続けたい「終の棲家」を建てたい方

これらの条件に共通するのは、「人と自然が共存する空間を求めている」という点。
シラス壁はまさにその理想を形にできる素材です。


まとめ:素材に“誠実さ”がある家

多くの家を見てきた建築士や設計者は、最後に残るのは「素材の誠実さ」と言います。

人工的な建材は、施工直後は美しくても、時間が経つと疲れてしまうことがある。
一方、自然素材は年月を経るほど味わいが増し、家全体がしっとりと落ち着いていきます。

シラス壁は、そんな**“歳月とともに育つ素材”**です。
派手さはありませんが、日々の暮らしに寄り添い、家族の健康と空気を静かに支えてくれる。

それこそが、シラス壁が注目され、おすすめされる理由かもしれません。


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