エアコンいらずの暮らし?シラス壁の省エネ効果を検証
はじめに
エアコンが手放せない日本の夏や冬。電気代の高騰や快適性の確保を両立させたい人にとって、「壁を変えるだけで暮らしが変わる」と聞いたら気になりますよね。今回は、自然素材の壁材「シラス壁」がどれだけ省エネに貢献できるのか、数字を交えてわかりやすく伝えます。
シラス壁とは?
シラス壁の「シラス」とは、2万5千年前、現在の鹿児島湾北部を火口とする姶良カルデラの大噴火によって発生した火砕流が堆積したものです。マグマが急激に冷やされて火砕流となったため、噴火前のマグマの成分の多くが揮発せずに閉じ込められています。火山の噴火で噴き出した火山灰や軽石が長い年月をかけて堆積したもの。主に九州南部に広く分布しています。
シラスは、桜島の噴火で空に舞い上がってから降ってくる火山灰と混同されがちですが、それとは似て非なる火山噴出物なのです。
その最大の特徴は、多孔質構造(たくさんの小さな穴が空いていること)。スポンジのようなこの構造が、湿気を吸ったり吐いたり、においを取り込んだりする働きを持っています。
つまり、自然素材でありながら「呼吸する壁材」なのです。
省エネに効く理由:壁の裏側でじんわり働くチカラ
① 調湿効果で体感温度が変わる
シラス壁は湿気が多いときには吸い込み、乾燥してくると吐き出すという調湿機能に優れた性質を持っています。その結果、夏は体感温度が約2℃下がると期待されています。
体感温度が下がると、冷房の設定温度を1℃高くしても同じ涼しさが得られ、結果的にエアコンの使用量を約10%節約できる可能性があります。
② 断熱&保温で空調の効率アップ
シラス壁は一般的なクロス壁より厚みがあるため、断熱・保温性にも優れています。冬は暖かさを逃がしにくく、夏は外の熱を通しにくい構造。冷暖房の効率アップにもつながります。
③ エアコン使用抑制の具体的な効果
実際に、2007年8月に千葉県柏市で行った実証実験では、シラス壁のある部屋で“体感温度”がどう推移するかが計測されています。その結果、エアコン稼動時間を短くしても快適な住空間が維持できたとされています。
副次的メリット:健康にも環境にも届くうれしい追加効果
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消臭と空気浄化:シラス壁はにおいや化学物質を吸着するため、ペットや料理臭、ホルムアルデヒドなどの空気中の有害成分を減らしてくれます。
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除菌・抗ウイルス効果:検証試験によると、シラス壁に噴霧した黄色ブドウ球菌は3時間後には元の1/1000になり、大腸菌も24時間後にはほぼ検出下限以下になったという結果があります。つまり、菌やウイルスの増殖を抑える働きがあるのです。
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吸音(静音)効果:多孔質な構造により音を吸収する特性があるため、騒音がやわらぎ、静かで落ち着いた住まいになります。
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エコな製造プロセス:シラスは粉状なので焼成する必要がなく、天日乾燥で加工できるため、大きなエネルギーを使わず製造可能。CO₂の排出を抑えた地球に優しい建材です。
実際の暮らしで感じた変化
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夏の夜もエアコンの設定温度を上げて過ごせるようになった
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冬の暖房を弱めても暖かく保てた
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洗濯物の生乾き臭がしにくくなり、除湿器の使用を減らせた
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訪問客によく「空気が爽やかだね」と言われるようになった
まとめ:エアコンに頼らず暮らしを変えるシラス壁の力
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調湿効果により体感温度が下がり、冷房効率や暖房効率もアップ
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年間を通じてエアコンの使用量を抑え、省エネな住環境に
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消臭・除菌・吸音など住まいの快適性も自然に向上
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環境負荷を抑えた製造プロセスで、サステナブルな選択肢でもある
「完全にエアコンなし」というのは難しいかもしれませんが、エアコンに頼りすぎない暮らしが実現できるというのは大きな魅力です。電気代にもやさしく、家族の健康にもやさしい──そんな生活に興味が湧いたら、ぜひシラス壁を検討してみてくださいね。
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