シラス壁はなぜ電気代削減につながる?エネルギー効率を徹底分析

2025/10/10(金) シラス壁コラム


はじめに― 「壁が節電につながる?」という意外な発想

「電気代を減らす」と聞くと、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、LED照明や省エネ家電、断熱窓などではないでしょうか。

でも実は、「壁」もエネルギー効率に大きく関係しています。
とくに、シラス壁という自然素材の壁は、エアコンの効き方や室内温度の安定に影響し、結果として電気代の削減につながることが分かっています。

「壁で節電?」とちょっと不思議に聞こえるかもしれませんが、そこには、ちゃんとした理由があるのです。


ラス壁が生まれた背景 ― 自然が教えてくれる“空気の知恵”

シラス壁の原料は、九州南部に広がる火山噴出物「シラス」。
2万年以上前の火山活動によって生まれたこの素材は、無数の小さな穴を持つ「多孔質(たこうしつ)構造」が特徴です。

この小さな穴が、空気中の水分や温度をゆるやかに調整する働きをします。つまり、湿度や温度を自然に整える力を持っているのです。

日本の家は、四季の変化が大きい気候の中で、いかにして「快適さ」と「省エネ」を両立させるかが課題。
シラス壁は、まさにその答えのひとつといえるでしょう。


メカニズム① ― 「湿度」を整えて冷暖房効率をアップ

空気がジメジメしていると、夏は暑く、冬は寒く感じやすくなります。
これは、湿度が高いと体温が逃げにくくなり、逆に乾燥すると体から熱が逃げやすくなるからです。

たとえば夏。
湿度が高いと汗が蒸発しにくく、同じ気温でも不快感が増します。エアコンを強くしても、なかなか「涼しい」と感じません。

ここでシラス壁の出番です。

シラス壁の細かい穴が空気中の水分を吸ったり吐いたりして、湿度をほどよく保ちます。
つまり、「同じ温度でも涼しく感じる」空気環境を作るのです。

冬も同じです。
空気が乾燥しすぎると、肌や喉に負担がかかるだけでなく、体感温度も下がります。
シラス壁が空気中の水分を適度に保ってくれることで、エアコンの設定温度を少し低めにしても暖かく感じるようになります。

つまり、快適さ=体感温度の向上=省エネというつながりが生まれるのです。


メカニズム② ― 「温度のムラ」をやわらげる蓄熱効果

シラス壁は、一般的なビニールクロスとは違い、壁そのものが熱を「ためて」「ゆっくり放つ」性質を持っています。
これは、シラスの微細な粒子構造が空気を多く含むため、断熱材のように働くことに由来します。

たとえば、昼間に太陽光で温まった空気が夜に冷めるとき、シラス壁がその温もりを少しだけ吸収してくれます。
夜になると、その熱をゆるやかに放出して、部屋の温度変化をやわらげてくれるのです。
逆に夏は、外の熱が室内に伝わりにくく、エアコンの冷気が逃げにくいという利点もあります。

こうした「熱のクッション効果」により、冷暖房のON/OFFが減り、結果として電気代の節約につながるのです。


メカニズム③ ― 「空気の流れ」を整える微気候効果

シラス壁の表面は、微細な凹凸をもつ多孔質の構造です。
この質感が、空気をほどよく受け止めながら、室内の温度や湿度の変化をやわらげます。
壁面の近くでは、やわらかな空気の流れと快適な“微気候”が生まれるとも言われています。

たとえば、エアコンの風が直接肌に当たらなくても、壁面に沿って空気がゆるやかに循環するため、部屋全体の温度が均一になりやすいのです。
また、湿気やニオイがこもりにくく、空気清浄機やサーキュレーターの稼働時間を短くできる場合もあります。
これも、見えないところでエネルギー効率に貢献しているポイントです。


メカニズム④ ― 「光」をやさしく反射して照明効率アップ

シラス壁の表面は、自然素材ならではの細かな凹凸があります。
このざらっとした質感が、光をやわらかく広げて室内に拡散させる働きをします。
いわゆる“拡散反射”が起こるため、照明の光が均一に広がり、部屋全体が明るく感じられるのです。
これは、ビニールクロスのようなツヤのある反射とは違い、「拡散反射」と呼ばれるやさしい光の広がり方です。

目にやさしく、照明の消費電力を抑えられる――
小さな差ですが、積み重なると確かな省エネ効果になります。


メカニズム⑤ ― シラス壁の“持続する性能”が省エネを支える

ビニールクロスの壁は、時間がたつと汚れや静電気によってホコリが付きやすくなり、空気の流れが悪くなります。
それに比べてシラス壁は、静電気をほとんど帯びず、ホコリやカビを寄せつけにくい性質があります。
そのため、長期間にわたって調湿・断熱効果が持続しやすく、「施工直後だけ快適」ということがありません。

壁材としての耐久性と機能性が長持ちすることも、エネルギー効率を下げない理由の一つです。


実際に感じる「快適さの違い」

鹿児島県内でシラス壁を採用したある家庭では、「夏の冷房設定を1〜2℃上げても快適に過ごせるようになった」という声がありました。

また、別の家庭では、「冬の朝、前よりも部屋が冷え切っていない」と感じたそうです。

こうした体感の違いは、科学的なデータにも裏づけがあります。
室内温度と湿度が安定すると、人が感じる“快適な温度帯”が広がるため、エアコンの設定温度を変えなくても快適に感じやすくなるのです。

体感温度が1℃変わるだけで、冷暖房費は約10%前後変わるといわれています。
つまり、**「快適=省エネ」**という関係が成り立つのです。


他の省エネ素材とのちがい

シラス壁は、断熱材や窓ガラスのように「外気を遮断する」タイプの省エネ素材ではありません。
むしろ、「室内環境を自然に整える」タイプの素材です。

そのため、断熱材や気密施工と組み合わせることで、より高いエネルギー効率を発揮します。
たとえば、高気密住宅では空気がこもりやすいという欠点がありますが、シラス壁が湿気やニオイを調整することで、換気の頻度や空調の負担を減らすことができます。

つまり、建材同士の相乗効果が期待できるのです。


数字で見るエネルギー効率の可能性

具体的な数値は住宅環境によって異なりますが、実験やユーザー調査では次のような傾向が報告されています。

効果 内容
調湿による体感温度上昇 夏・冬ともに約1〜2℃の体感差
冷暖房稼働時間の削減 年間で約10〜15%減少
照明効率の向上 明るさの感じ方が10%アップ  ※条件下による
壁の寿命 ビニールクロスの2〜3倍(張り替え頻度低下)


これらの要素を合計すると、年間の電気代で約5〜10%の削減効果が見込まれるケースもあります。

もちろん、これは環境や使い方によって変わりますが、「快適な空間をつくることで結果的に省エネになる」
――それがシラス壁の最大の特徴なのです。


シラス壁がもたらす“エネルギーのやさしさ”

エネルギー効率を上げるとは、単に「電気を使わない」ことではありません。
自然の仕組みを上手に取り入れ、無理せず快適な環境を保つこと。それが本当の“省エネ”です。
シラス壁は、自然の素材でありながら、現代のエネルギー問題にしっかり応える力を持っています。

人にも環境にもやさしい省エネ。
それを実現するのが、火山がくれたこの“呼吸する壁”なのです。


まとめ― 「節電」と「快適」は、同じ方向を向いている

シラス壁が電気代削減につながる理由をまとめると、次のとおりです。

  1. 多孔質構造が湿度を整え、体感温度を上げる
  2. 蓄熱性と断熱性で温度変化をやわらげる
  3. 表面の凹凸が空気の流れを整え、冷暖房効率を高める
  4. 光をやわらかく反射し、照明効率を上げる
  5. 静電気が少なく、長期間性能が続く

これらが組み合わさることで、「自然素材なのにハイテクな省エネ性能」を発揮します。

私たちが求めているのは、ただ冷暖房費を減らすことではなく、快適で健康的な暮らしを、少ないエネルギーで続けていくこと

その答えが、壁の中に隠れている――そう考えると、家づくりがちょっとワクワクしてきませんか?


ダウンロード版資料請求   郵送版資料請求

 

1ページ (全45ページ中)