小舟木エコ村集会所

滋賀県近江八幡市

カテゴリ|非住宅建築物

~この自然豊かな地球で、ずっと暮らしていけるように暮らし方を見直そう。
人も、あらゆるいきものも、いきいきと暮らせる社会をつくろう。~
2000年に生まれたエコ村構想から、NPO「エコ村ネットワーキング」の誕生をきっかけに、持続可能な社会のモデルとしてエコ村づくりが始まることに・・・

今後のまちづくりの拠点となる集会所

今後のまちづくりの拠点となる集会所。広々とした公園も隣接。毎日、夕方ともなると、親子が集い、走り回ったり、おしゃべりをしたりと、とてもにぎやかな光景が広がっている。

第一号プロジェクトとして小舟木エコ村(滋賀県近江八幡市)のまちづくりがスタートし、現在約100世帯が入居しています。
2009年5月には住民活動の拠点となる公園・集会所が竣工。
自然素材や自然エネルギーの活用、パッシブデザインが特徴的な集会所の内壁に、シラス壁(薩摩中霧島壁)が採用されています。

今回集会所の計画に携わった、アーキテクトシップ代表建築家 松岡拓公雄氏と(株)地球の芽 西山由美氏にお話を伺いました。

集会所内部

集会所内部。構造・床・壁に自然素材をふんだんに使用。自然の恵みによる心地よさを体感できる。建物周囲の縁側に腰をおろし、外の景色を眺めれば自然と会話は弾む。
(薩摩中霧島壁SN-2 ソフトヘアライン仕上げ)


●小舟木エコ村集会所 コンセプト
「環境」「エコ」というと風力や太陽光発電など建築設備に頼ることを考えがちですが、建築設備だけでなく自然の恩恵を受けるよう環境を活かし、外部とのつながりを大切に設計しました。

高性能断熱や太陽光発電システム、雨水利用などの代表的な環境技術も採用していますが、この集会所においては特に中間期における自然通風や庇と高窓による日照コントロール、中間領域の採用など、建築自体の形体による環境要素の取り込みに主眼をおいています。
太陽の入射角から庇の長さを検討し、夏期は室内に日照が入らないように、冬期は十分な日照が確保できるように、庇によって室内の熱や光を調整しています。また高窓やシーリングファン、地熱利用による室温循環によって勾配天井に沿って流れる空気の対流をコントロールしています。その他にも県産材や再生素材などの環境配慮建材を積極的に採用するなど、様々な観点から環境要素を建築に取込むことで、建築設備に頼ることなく年間を通じて安定した居住性を確保しています。

 

通風、日照、熱変化を考慮しながら平面、断面形状を決定

通風、日照、熱変化を考慮しながら平面、断面形状を決定。
その結果、深い庇と勾配屋根、勾配天井をもつシンプルな形体が採用。

再生しにくい化石燃料系の素材の使用を最小限にとどめ、木・土などの自然素材と通風や日照といった自然要素との相互作用により敷地のもつ潜在性を最大限に引き出すような建築自体の形体を導く事で、そこには敷地との知的な関係を保ちながら暮らしていける場所が生まれると考えています。

 

薩摩中霧島壁SN-2 ソフトヘアライン仕上げ

薩摩中霧島壁SN-2
ソフトヘアライン仕上げ

■シラス壁採用の理由
シラス壁は、自然素材の機能・効果が期待でき、施工・意匠の観点から今回の物件に最適と判断し採用を決定しました。事前にサンプルでの確認を行い、仕上げ・納まりに関しても現場と時間をかけ調整を行ったので、ほぼイメージ通りの仕上がりとなっています。

●小舟木エコ村の現在
小舟木エコ村には、現在、約100世帯のご家族が暮らしています。
各家には家庭菜園があり、野菜やハーブ、果樹などが育っています。土に親しむ暮らしを通じて、家族や親戚間での会話がはずみ、ご近隣同士の交流も生まれています。
また、雨水の利用、家庭で生ごみを堆肥化し菜園に用いる取り組みなど、家庭単位での循環型ライフスタイル実践の試みが始まっています。

 

どこかなつかしい景観は、建物の配置とデザインの工夫によるもの

どこかなつかしい景観は、建物の配置とデザインの工夫によるもの。
外装の調和のために、集落地の豊かな自然とも調和すると思われる「おすすめ色」「地域別おすすめ色」等の使用が推奨されている。

休日には、あちらこちらで、菜園で過ごす時間を楽しむご家族の姿が見受けられます。
真夏の強い日射を遮るために、ゴーヤやヘチマ、朝顔などのつる性の植物で「緑のカーテン」をつくる方も増えています。こうした植物や、菜園の野菜、木々の緑が豊かに育ち始めた風景の中、子どもを連れてのんびりと散歩をしたり、休日に友人を招いてバーベキューパーティーをしたりと、皆さん思い思いに、小舟木エコ村での暮らしを楽しんでいらっしゃるようです。

お住まいの方からは、「新居の環境も小舟木エコ村での暮らしも快適過ぎて、家で過ごす時間が長くなりました。」「緑豊かな環境の中で生活していることを実感しています。」「雨水利用を通して、水を大切にしようと思うようになりました。」「野菜が自分の庭で採れたり、雨水を水道水の替わりに使えたり、経済的です。」「このまちには、季節ごとの楽しみがあっていいです。」などの感想をお聞きしています。

 

各戸に菜園を設けることが 小舟木エコ村風景づくり協定で 定められている

各戸に菜園を設けることが小舟木エコ村風景づくり協定で定められている。
採りたての野菜のおいしさを子供たちに伝えることができる。

●小舟木エコ村のこれから
今後は、各家庭での取り組みに加え、コミュニティでの取り組みを推進していく時期と考えています。
例えば、まちの中に地域の生き物の生息地(ビオトープ)を創る活動、カーシェアリング、集会所の薪ストーブを通して地元の山の資源を利用する活動、リサイクルのしくみづくりなどです。
全住民が参加する小舟木エコ村自治会と大学、市内で活動している環境団体などが協働して、新たな挑戦が行われていくことを期待しています。
小舟木エコ村が、これから益々、新しい価値観とライフスタイルを生み出し、発信していく場になることを願います。また、小舟木エコ村の子どもたちが、将来、このまちで育ったことを誇りに思うような、先進的で生き生きとしたまちになればと思っています。

株式会社 地球の芽 西山由美氏

小舟木エコ村は、はじまったばかり。 今後、このまちが住民たちによってどのように成長・変化していくかとても楽しみです。 同時に、持続可能な社会づくりを実践するこのまちの生活から学ぶことはたくさんありそうです。

私たちも、未来世代のために、出来ることからひとつずつはじめてみませんか。

※小舟木エコ村は、NPO法人エコ村ネットワーキングが持続可能な社会のモデルとして提唱する「エコ村」構想の第一号プロジェクトです。

 

アーキテクトシップ 
東京/TOKYO STUDIO
東京都武蔵野市西久保1-1-11-305
TEL:0422-26-7898
滋賀/LAKESIDE STUDIO
滋賀県彦根市八坂町3181-2F
TEL:0749-20-5110 
URL:http://www.architectship.jp

 

株式会社 秋村組
滋賀県近江八幡市出町170
TEL:0748-33-1211
URL:http://www.ap-world.com

株式会社 地球の芽
滋賀県近江八幡市桜宮町290
TEL:0748-33-7522
URL:http://www.chikyunome.co.jp