環境省エコハウスモデル事業 エコハウスやまなし ~自然の恵みと暮らす家~
山梨市
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「環境省エコハウスモデル事業」は、21世紀環境共生型住宅のモデル整備による建設促進事業です。 全国20の自治体が環境省の補助金を受け、それぞれの地域の気候風土や特色を活かしたエコハウスの実現と普及に取り組みます。
応募の中で選ばれた自治体のうちのひとつ、山梨市の「エコハウスやまなし」にてシラス壁が内外装に採用されています。
「エコハウスやまなし」は、山梨駅の南側、徒歩2分の位置にある。周囲の街並みにあった落ち着いた外観。 外壁:スーパー白洲そとん壁W W-121 かき落とし仕上げ
甲府盆地の東部に位置し、笛吹川沿いのなだらかな斜面や南部の平坦地には葡萄・桃などの果樹園が広がり、美しい景観を形成している山梨市。
山梨市が手がける環境省エコハウス事業「エコハウスやまなし」では、寒暖の差が激しい気候のなかでもエアコンに頼らずに年間を通じて快適に過ごせるように、太陽熱や風通しによる温度調整の可能性を最大限に引き出す構造と、木質バイオマス等の地産エネルギーを活用した住宅としています。
また、家庭菜園の設置等により、次世代型のライフスタイルを実践できる住宅を目指しています。
山梨市役所 環境課 岡氏にお話を伺いました。
「一般家庭からでる二酸化炭素排出量は1990年より現在まで4割以上伸び続けています。環境省エコハウス事業は、この一般家庭の二酸化炭素排出量に注目した事業です。
エコハウスやまなしでは、地域特性をつかみ、風の流れや陽の当たり方を上手く利用し、山梨市でしかできないことに取り込んでいます。
規制的なシステムをあまり多く入れず、エコ技術の簡易なところから高度な技術までをそれぞれの取り組み意識に合わせてマイハウスに落とし込める工夫を盛り込んでいます。」
ここエコハウスやまなしでは、壁材には内壁・外壁ともにシラス壁を使用しています。
採用理由についてお聞きしました。
「材料は設計の星野さんが選定している部分が強いのですが、今までは部屋単位で暖めたり冷やしたりという考えでいたところを、このエコハウスは家全体で太陽熱を取り込んだり、風の流れを考え、設計を検討する中で効果がある材料を選定しているようです。
山梨市は盆地のため、夏の湿度が非常に高く、また一日の寒暖の差が激しいため、湿度調整が重要なポイントとなります。
シラス壁は“自然素材” “呼吸のできる壁” “湿度調整機能”というメリットがあり、提案を受けて採用を決めました。」
シックハウス対策にも効果的なシラス壁と他の自然素材の相乗効果により、健康で快適な空間を実現しています。
エコハウス事業への参加理由、今後の活用についてお聞きしました。
「山梨市は平成17年度より、新エネルギー事業 化石燃料にかわるエネルギーとして、太陽光発電や水力・風力・バイオマスといった自然エネルギーの推進を努めてきました。
一方で、一般家庭におけるエネルギー利用規制が図られていないのが現状です。
今まで取り組んできたエネルギー事業を集約させ、一般家庭にもモデルとして提案し、普及につなげたいという視点から参加を望みました。
今後このエコハウスは、主に展示場という形で、市内外の方に見学できるスペースとして活用していきます。」
左:和の庭を眺めながら座って使う一坪書斎 右:柔らかな光が差し込むリビング。障子は、夏は日射を遮り、冬は暖気を逃さない役割も持つ。
●風・光の道
足元に配置した窓、格子の吹き抜け、階段等を利用して空気の流れを作っている。室内の温度調整のみならず、明るさも取り込んでいる。
設計に携わった星野正男氏(有限会社 メイ建築工房 山梨県笛吹市)に、エコハウスやまなしにおけるシラス壁の役割について伺いました。
「まず、エコハウスを考えたときに、何をもってエコとするかが重要だと思います。
様々なエコへのアプローチの仕方がありますが、そのなかのひとつが素材。一般的には自然素材を使えばエコですが、私はそれだけはエコではないと考えています。本来のエコとは、自然素材の機能を活かしたものでなければならず、自然を享受できる素材としてシラス壁を選びました。
実は以前は珪藻土を使っていました。しかし、所在が判らなかったり、色々なものが入っていたり、含有量も出せないメーカーなどがありました。数多くの素材と出会う中で、現在はシラス壁がいいという判断で使用しています。」
エコハウスやまなしにおける設計の工夫をお聞きしました。
「このエコハウスは、山梨市の気候、地域性を充分に活かした建物です。
山梨市の場合は盆地のため、夏場日中の温度は上がり、夜間は下がります。下がった気温を、暑いときに活用する考え方を取り入れています。
このように、地域性を上手く利用して、冷暖房エネルギーを少なくする取り組みを試みました。県内の地域ならば、この取り組みを応用できるというのも特徴です。
また、私は人の暮らし方まで提案するエコにしたいと考えました。
そのため、この住宅では、コミュニケーションも大きな柱として考えています。
家族間のコミュニケーションとして、子供達が部屋に閉じこもらない間取りの提案。
地域とのコミュニケーションとして、オープンで気配がわかるような住まいづくり。
普通の住宅でも玄関先をゆったりさせて招くスペースを確保することで、コミュニケーションの生まれる場を用意しました。間取りはコミュニケーションのパーツなのです。
そして、このエコが地球とのコミュニケーションにつながり、地球に対しより優しくアプローチしていくことができるのではないでしょうか。」
このエコハウスには、星野氏の思いがたくさん詰め込まれています。
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山梨市の街並みに溶け込む外観。玄関のドアを開けると、明るく心地よい空気が室内を駆け抜けています。
シラス壁は、自然の力を上手く活用したエコハウスやまなしの部材のひとつにすぎません。しかし、シラス壁を含む自然素材の機能が、盆地特有の不快な夏場に心地よい涼しさや快適な生活空間もたらすことでしょう。
この「エコハウスやまなし」から、エコハウスについて学んでみませんか。
●エコハウスやまなし エコの工夫
左上:暖気を循環させ床下へ導き床に設けられたスリットから室内に取り込む
中上:長寿命で消費電力も低いLED照明
中右:ワイン樽に雨水を溜めて散水用に利用
左下:光と風の通る床
中下:構造材や仕上材として県産材・葉枯らし材を活用
右下:太陽エネルギーを活用するソーラーエコキュート
●エコハウスやまなし 設計主旨と環境配慮のポイント
山梨市は甲府盆地の北東部に位置し、夏は猛暑、冬は厳冬、日中の寒暖の差も大きい盆地特有の気候であり、また日照時間に恵まれており、その気候を最大限活用できるように考えました。
冬季の暖房は太陽の日射熱を利用したダイレクトゲイン方式の「蓄熱床」を主たる暖房とし、悪天候時や気温が低い時には、端材や間伐材を原料とする「FF式ペレットストーブ」により補います。また、室温均一化のために天井扇やサーキュレーションダクトにより空気を循環させています。夏季には、窓廻りは日射遮蔽をし、気温の下がる朝晩の涼しい空気を室内に採り込み、日中は窓を閉め外気温を遮断することで、涼しさを保ちます。春秋などの快適な気候の時には窓を開け、地窓などの低い窓から、越屋根への重力換気により自然な空気の流れを作ります。更に、調湿効果も期待しており、無垢の木材を見える部分に使い、羊毛系断熱材、シラス壁、和紙壁紙等の自然素材の持つ調湿特性を利用し、均一な湿度を保つ快適空間を意図しています。
エコハウスやまなし
〒405-0018 山梨県山梨市上神内内川1246-1
TEL:0553-22-5001
利用時間:午前9時~午後5時(入場無料)
定休日:水曜日(祝日の場合は翌平日)
※見学は事前の予約をお願いします。
TEL:0533-22-1111 内線2133
環境課新エネルギー推進担当
URL:http://www.city.yamanashi.yamanashi.jp/
設計 自然の恵みと暮らす家設計業務共同体
星野正男(メイ建築工房)/雨宮秀記(設計室すばる)
URL:http://homepage1.nifty.com/may-/