京都サロン ~ つくり手を魅了し続ける家 ~

京都府西京区大原野

商品|薩摩中霧島壁

歴史的文化圏・京都において、文化財から神社仏閣、また町家といった生活空間まで幅広いニーズを支えている左官職人。厳しい修行を経て磨かれた技は、今も見る者を魅了してやみません。左官技術を継承し、自然素材と次世代設備にこだわった「これからの住まい」を提唱されている株式会社 松彦建設工業様のモデルハウス「京都サロン」に伺いました。

薩摩中霧島壁(オリジナルカラー、ソフトヘアライン仕上げ)が施工された2階リビング部分

写真1)薩摩中霧島壁(オリジナルカラー、ソフトヘアライン仕上げ)が施工された2階リビング部分。つくり手を魅了し続けるこの風景は、建築雑誌やメディアに多く登場しています。

2014年9月に完成した「京都サロン」。設計は伊礼智氏によるもので、竣工当時からそのデザインと自然エネルギーを活用して快適に住まうというコンセプトが注目され、現在までに約2,000人が来場されています。そのほどんどが工務店や設計事務所の関係者なのだとか。「つくり手」が一度は訪れてみたいと思う建築の内外装材に「シラス壁」をご採用いただきました。

外装はスーパー白洲そとん壁Wのかき落とし仕上げ

写真2)外装はスーパー白洲そとん壁Wのかき落とし仕上げ(カラー:W-121)キャンパスのような白壁に、植栽の緑が生えるよう設計されています。

シラス壁をリリース当初から使ってくださっている代表取締役の松本氏は、その経年変化を十年来にわたって見てこられました。「シラス壁を一番最初に使ったお客様のお宅は、全くメンテナンスしていませんが、今でもきれいです。京都サロンは施工から3年ほど経ちますが、状態は変わっていません。」とお話しくださいました。

玄関から続く廊下は石タイル

写真3)玄関から続く廊下は石タイル。正面に広がる窓からは「光と緑」を内に引き込み、外とのつながりを感じさせます。

京都サロンでは、シラス壁だけではなく、木材や石といった自然素材についても、どのように経年変化するのかを見るために実験的に使われています。木材はそのほとんどが杉と檜。「オール無塗装でワックスも使っていませんが、木の持っている油分だけで十分な美しさを保つことができます。実際、掃除機をかけるだけで、拭き掃除やメンテナンスもしていません。素足だと素材に触れる心地よさをさらに実感できます。」と松本氏。自然素材は、化学的なものを使わずとも美観を保つことができ、さらに、メンテナンスの手間も経費もいらないことを実証されています。

松本氏が「この部屋が一番居心地がいいと思っています。」と言われる1階寝室

写真4)松本氏が「この部屋が一番居心地がいいと思っています。」と言われる1階寝室。ベンチ兼デスクからフルオープンの窓を開けると、そのままデッキへ出ることができる設計。ここにも、次世代設備として、ヒートポンプ冷温水循環冷暖房システム「クール暖(※1)」が設置されています。

また、素材の特性について熟知しているからこそ、住まい手にご納得いただける提案ができるとおっしゃる松本氏。以前、重度のシックハウス症候群に悩むお客様から、施工を依頼されたことがあったのだとか。「せっかく建てた新築を取り壊さないといけないほど深刻な状態で、壁に触れただけで蕁麻疹が出てしまうほどでした。そこで、内装を全て薩摩中霧島壁にして施工させていただきました。現在お住まいになって約10年になられますが、毎日ご機嫌で過ごしていらっしゃいます。自然素材であるシラス壁が健康を支える建材であることを証明できたと思います。」と、シラス壁に厚い信頼を寄せてくださいました。

2階へつながる階段部分

写真5)2階へつながる階段部分。天窓や1階空間から差し込む光が、シラス壁の自然な風合いを際立たせます。

自然素材の魅力は、風合いの美しさにもあるとおっしゃる松本氏。「壁は素材感を出したいので、パターンはあまりつけず刷毛引きで仕上げること多いです。天井はスチロゴテ仕上げが気に入っています。シラス壁は非常に接着性が高い素材なので、一回塗ると落ちないですから、天井施工も扱いやすいと思います。」とのこと。

天井の高さを抑えて、勾配天井とのバランスをとる伊礼氏の特徴的な設計

写真6)天井の高さを抑えて、勾配天井とのバランスをとる伊礼氏の特徴的な設計。シラス壁の調湿効果や杉木材のぬくもりが相まって、空間に穏やさが感じられる。

松彦建設工業様の前身は左官業ということもあり、左官の深い知識をお持ちの松本氏。全国から成り手を受け入れ、育成に力を注がれています。松本氏は「京都サロンの壁は、左官職人を育てるために丁稚に塗らせました。その丁稚も今は独立し活躍しています。左官職人が仕上げた壁は、クロスでは出させない自然な陰影でやさしい奥行き感があり、空間に品格を持たせます。日本の伝統技術を多くの方にご体感いただきたくためにも、次世代の育成は重要と考えています。」とのこと。

円卓は伊礼氏の設計

写真7)(左)円卓は伊礼氏の設計。(右)天井トップ部分は少し丸みをもたせてあり、やさしい印象に。塗りは左官職人を目指す若手が手がけられました。つくり手が多くを学ぶことができる場所でもあります。

次世代設備として自然エネルギーを活用し、自然素材と調和した環境に配慮した空間を実現したことも、京都サロンの大きな特徴です。またシラス壁を初めて採用した頃から「低炭素住宅」を施工されてきた経験から、ZEH(ゼロエネルギー住宅)普及にも意欲的に取り組まれています。

自然エネルギーをうまく活用することで、底冷えが厳しい京都の冬も、半袖で過ごせるほど快適に

写真8)80畳もの広さを暖められる(左)薪ストーブと(右)「そよ風2 (※2)」。自然エネルギーをうまく活用することで、底冷えが厳しい京都の冬も、半袖で過ごせるほど快適に。

京都サロンには、図面だけでは見切れない魅力があると松本氏はおっしゃいます。「施工して3年で分かったことがあります。それは、自律神経から健康になる家だということ。普段は素足が多いのですが、玄関の石タイルから寝室の絨毯、リビングの木のフローリング、ランドリールームの麻と移動するたびに床材が変わる。足への刺激が感じられるんです。そしてシラス壁の調湿機能がもたらすやわらかな空気感。ずっといたくなる。落ち着く。そういった声をたくさん聞いています。」

白のシステムキッチンには、長野産のくるみの木を採用し上品に

写真9)(左)白のシステムキッチンには、長野産のくるみの木を採用し上品に。(右)ランドリールームの床は、麻のカーペット。杉フローリングや石のタイルなど、部屋を移動する度に足ざわりが変化する。

自然素材と次世代設備、そして左官職人の研ぎ澄まされた技術と細部にまで美意識が感じられる設計手法、全てが調和し渾然一体となった「京都サロン」。その魅力は、これからもつくり手の意欲を掻き立て、次世代の新たな作品へと受け継がれていくことでしょう。

外装の出隅にはR曲線が配されました

写真10)外装の出隅にはR曲線が配されました。シラス壁の持ち味を最大限に引き出された左官職人技です。

※1「クール暖」:夏は冷水、冬は温水を循環させ、放熱パネル部からふく射波を放射する冷暖房システム。一年を通して心地よい温度、快適な空気環境が実現できる。

※2「そよ風2」:昼間の太陽熱や夜間の放射冷却など、自然のしくみを取り込み、季節に応じて住宅の中に温熱環境を心地よくコントロールする「パッシブソーラーシステム」。

建築総合設計・施工:株式会社 松彦建設工業
〒610-1123 京都市西京区大原野上里北ノ町1228-7
TEL 075-335-5077
ホームページ http://www.matsuhiko.co.jp/

「京都サロン」:http://www.matsuhiko.co.jp/kyoto-salon/salon
〒610-1123 京都府西京区大原野上里南ノ町354番5
設計:伊礼智設計室(伊礼 智氏・一場由美氏)
施工:松彦建設工業
造園:荻野寿也景観設計