紡ぐ家~3世代の住まい~
大分県由布市
カテゴリ|すべて
設計:山道勉建築
紡ぐ家~3世代の住まい~は、竹林の山を背に、南側に棚田を望む里山の中にあります。
敷地の東側にある南東から北へと続く石畳は1,000年の歴史をもつ参道で、今もなお、通学路や生活歩道として地域の人たちに日々活用されています。
悠久より繋がってきたこの景色に見合う家となることを心にとどめ、紡ぐ家~3世代の住まい~の設計は始まりました。
この家に、シラス外装材「スーパー白洲そとん壁W」が採用されています。
アプローチからの外観。
外装材:スーパー白洲そとん壁W W-121 掻き落とし仕上げ
設計を手がけた、山道勉建築 山道勉氏にお話を伺いました。
「代々住み継いでこられた築80年余りの住宅の建て替えです。
老朽化が進んできたこともあり、これまでの増築部分を含めると大きすぎた住居を、家族の息遣いが共に感じられるようコンパクトに、そしてご両親が穏やかに過ごせるようなバリアフリーの家を、と建て主は望まれ、この『紡ぐ家~3世代の住まい~』が誕生しました。」
水平に伸びる美しいプロポーション。
スーパー白洲そとん壁W、重厚感のある屋根、深い軒、美しい格子の建具、周囲の自然に溶け込みながら凛とした美しさを放つ外観デザインです。
外壁材に、スーパー白洲そとん壁Wを採用した理由をお聞きました。
「調湿性があり、素材の経年変化が楽しめるもので、職人の手の跡が残る素材を考えていました。
この家の佇まいに合うものとして、また旧家の外壁が白色で記憶を紡ぐという意味において、スーパー白洲そとん壁Wの機能性と意匠性を評価し採用することにしました。」
左:アプローチから、南の庭を見る。
中:石垣の庭から、北の庭・小屋、そしてダイニングを見る。小屋の屋根は旧家で使っていた瓦を再利用し葺き直したもの。
右:ぐるっと囲む深い軒とぬれ縁に守られて、心は内と外を行き来する。
外装材:スーパー白洲そとん壁W W-121 掻き落とし仕上げ
●紡ぐ家~3世代の住まい~は、こんな住まいです。
「家の歴史とのつながり」、「家族(世代)のつながり」、「地域とのつながり」を、多角的にとらえて誕生した住まいです。 「3世代がひとつの家で共に過ごすこと」をじっくり見つめました。 コンパクトにしながらもプライバシーの保ち方・距離感に心を配りました。 家族が集う空間と個になる空間の距離感、それぞれの世代が自分らしくいられるよう、相手に配慮したり、自分の気持ちを自然と切り替えたりできるよう工夫しています。
平屋部分の繋がり方はもとより、2階部分の在り方についても考慮しました。 階高のとらえ方を、空間の性格と上手に同調させることで、室内の家族同士や屋外とのつながり、そして将来にわたっても、2階の存在を引き立たせるようにしています。 また、あらゆる空間においてこの家を豊かにする事柄が互いに共存し、共鳴しあっています。 たとえば、プランから導きだされた構造によってより「強さ」を高めたこと、そこでは収納などの「機能」も高めていること、さらに「光」や「風」や「気配」がやさしく行き交う空間としていること、など。 さらに、この家を深めることとして、古材の存在があります。 旧家で使われていた、瓦・梁・柱・框・棚・建具・家具・手すり・基礎石・植栽など、他のものでは代用することのできない古材たちが、新しい材とやさしく馴染みながら包まれる人たちの気持ちをやわらげます。 旧家や地域の歴史、家族の思い出の詰まった素材たちは、新たな家で生活のなかにそっと溶け込むように、存在しています。
“紡ぐ家”では、こうした「豊かな家であるための意匠」が、あちらこちらに自然とちりばめられています。 建て主ご家族と山道勉建築が共に見つめてとらえた家の本質は、幾層にも重なって、より一層深みある「日常」を紡いでゆく家となりました。
上:リビングから、和室・ダイニング・2階吹抜けを見る。3世代が自然と集まり、その時々に合った居心地の良い場が生まれる。
左下:廊下から、ダイニング方向を見る。光・風・人の気配は、この路(みち)で均しく交わる。
右下:深い軒と緩やかな勾配の和室。両引きの木製建具を開け放つと気持ちは自然と芝庭へ、そして棚田の景色へと向かう。
住まい手からの声をいただきました。
「長く住み継いできた記憶もとどめるような、この里山の地域にふさわしい家となりました。
つっぱった白ではない、やわらかな陰影をもつ白壁がやさしい佇まいに似合っていて、とても気に入っています。
新しい家に住んでひと冬越しましたが一度も結露はありません。とてもあたたかな家です。」
スーパー白洲そとん壁Wは、住まいの快適性能だけでなく、住み継ぐ“記憶”を継承する役割をも担っています。
左:キッチンから、シンク・カップボード・家事コーナーを見る。全て家具工事で、オリジナル製作したもの。
右:ダイニングから、キッチン・家事コーナーを見る。北の庭や小屋を愛でる空間は、障子を閉じるとやわらかな光に包まれる。
山道勉氏は言います。
「紡ぐ(つむぐ)には、いろいろな意味があります。
この家のことを想ったとき、そしてこれまでとこれからとに想いを巡らせたとき、自然とその言葉が浮かんできました。
ご家族や地域の皆さんを包み愛することのできる家で、そして皆さんからも愛される家でありますように・・・との願いを込めて。」
今日も、家中に家族の笑い声が響きます。
“紡ぐ家~3世代の住まい~”の新たな日常が始まっています。
左:旧家の基礎石や縁石は石畳となり、古瓦と共に弧を描きながら玄関へと導く。
右:元からそこに在る百日紅の間から、庭を通して見る。
外装材:スーパー白洲そとん壁W W-121 掻き落とし仕上げ
設計: 建築家 山道 勉
山道勉建築
〒870-0854大分県大分市羽屋9-3 B-301
電話&FAX:097-546-1565
URL:http://www.geocities.jp/team_yamatani/
ブログ:http://teamyt.exblog.jp/
Facebook:http://www.facebook.com/team.yamatani
“ふっとうれしくなるコト、カタチにしています。”
山道勉建築は住宅を中心に、設計・監理を専業とした設計活動をしています。
キッチンをはじめとした家具(造り付け・置き家具)や建具、街との関係をつなぐ庭(外構)も含め総合的に設計することで、そっと寄り添い、ときには語りかける建築を生みだしています。
柔軟と不変のバランスを大事に、みずみずしくしなやかな、野菜のような建築をつくるのが得意です。
住宅は、住む人に対して丁度よく在り、その街・地域の一員として長い時間を重ねてゆけるもので在りたいと思います。
そのために、私たちはクライアントとじっくりお話しながらつくることを大事にしています。
互いにキャッチボールしていくなかで、ともに「本質」に気づき見つけていく―。
心の襞(ひだ)のようなところをカタチにした住宅を提案していきます。
そして引渡し後もクライアントご家族とは家族ぐるみの関係を築かせていただいています。