素材選びで差が出る「10年後の室内環境」とは

2026/02/16(月) シラス壁コラム


画像提供・施工:株式会社 木の家専門店 谷口工務店(滋賀県)

はじめに

家づくりというと、まず思い浮かぶのは間取りやデザインかもしれません。
どんなキッチンにするか、床は無垢にするか、照明はどうするか。

どれも大切です。

でも、実はそれ以上に、あとから大きな差が出るものがあります。
それが「素材選び」です。

完成したばかりの家は、どの家もきれいです。
でも、10年たったとき。室内の空気は、同じでしょうか。

今日は、あまり語られることの少ない「10年後の室内環境」という視点で考えてみたいと思います。


新築のときは、みんな心地いい

家が完成した直後は、どこもすっきりしています。壁も天井も床も、新しくて気持ちがいい。
けれど、暮らしはそこから始まります。

料理をする。
洗濯物を部屋干しする。
お風呂あがりに湿気が広がる。
雨の日が続く。
冬は結露が出る。

毎日の生活の中で、室内の空気はゆっくりと変わっていきます。
その変化を受け止めているのが、実は「壁」や「天井」といった仕上げ材なのです。


室内環境は、少しずつ積み重なる

空気の変化は、目に見えません。けれど、確実に積み重なっています。
たとえば湿気。
湿度が高い状態が続くと、カビが出やすくなったり、においがこもったりします。
逆に乾燥しすぎると、のどが痛くなったり、静電気が起きやすくなったりします。

問題は、「今日どうか」ではありません。「それが何年も続いたらどうなるか」です。

壁の中に湿気がたまりやすい素材なのか。
空気をほとんど通さない素材なのか。
それとも、湿度の変化をやわらかく受け止められる素材なのか。

この違いが、10年後の空気の質にあらわれます。


においも、時間とともに変わる

室内のにおいは、強いとすぐに気づきます。
でも、ほんのわずかなにおいはどうでしょう。

強いにおいでなくても、それが毎日続くと、気づかないうちに負担になることがあります。
においは記憶や感情と結びつきやすいため、家全体の印象として、なんとなく残りやすいのです。

素材によっては、においを表面にため込みやすいものもあります。
逆に、においの成分を吸着し、ゆっくり外に放出していく素材もあります。

これも、数日ではわかりません。数年たったときに差が出ます。


見た目よりも「空気との関わり」

壁材を選ぶとき、多くの人は色や質感を見ます。もちろん、それは大切です。
けれど、本当に長く住む家を考えるなら、もう一つ視点を足してみてください。
それは、「この素材は空気とどう関わるのか」という視点です。

・湿気をため込みにくいか
・余分な湿気をゆるやかに吸ったり放したりできるか
・においをごまかすのではなく、空気を整える働きがあるか

こうした力を持つ素材は、年月がたつほど違いがあらわれます。


ビニールクロスの10年後

日本の住宅で多く使われているのがビニールクロスです。施工しやすく、価格も安定していて、デザインも豊富。とても便利な素材です。
ただ、ビニールは空気をほとんど通しません。
表面はなめらかで、汚れは拭き取りやすい反面、湿気やにおいの逃げ道は少なくなります。

10年たったとき、表面の汚れや継ぎ目のはがれだけでなく、「なんとなく空気が重い」と感じることがあります。
それは、素材そのものの性質によるものかもしれません。


自然素材という選択

そこで、最近あらためて注目されているのが、自然素材の壁です。
珪藻土や漆喰など、昔から使われてきた素材には、呼吸する性質があります。

空気中の湿気を吸ったり放したりする。
においの成分を吸着する。
表面が固まりすぎず、微細な穴を持っている。

こうした性質が、室内環境をゆるやかに整えてくれます。


シラスという素材

その自然素材のひとつに、「シラス」を原料とした壁材があります。

シラスは、、九州地方に堆積している火災流噴出物のうち、主に約2.7万年前の姶良カルデラ(現在の錦江湾奥部)の噴火によって発生した入戸火砕流を起源とする、白色~白灰色で砂状の自然素材です。とても細かい粒子で、多孔質という性質を持っています。

多孔質とは、目に見えないほど小さな穴が無数にある状態のこと。
この構造が、湿気やにおいに対して働きます。

・調湿性がある
・におい成分を吸着する
・坑菌・坑ウィルス機能がある
・静電気が起きにくく、ほこりがつきにくい

こうした特徴があります。
大きな主張はしません。けれど、10年、15年と時間がたったとき、室内の空気の印象に差が出てきます。


「変わらない」ことの価値

家は、時間とともに少しずつ変わります。家具は増え、子どもが成長し、暮らし方も変わります。
そんな中で、空気だけはできるだけ穏やかであってほしい。

夏でも湿気がこもりすぎず、
冬でも乾きすぎない。
においが強く残らない。

「変わらない空気」は、実は素材の力によって支えられています。


10年後に気づく違い

10年後、家に入った瞬間。

空気が軽い。
深呼吸がしやすい。
なんとなく落ち着く。

その感覚は、派手な設備では生まれません。壁や天井といった、目立たない部分の積み重ねです。
素材選びは、完成時の見た目だけでなく、「10年後にどうなっていたいか」を考えることでもあります。


まとめ

家づくりは、一瞬の選択の連続です。
その中で、壁材は後回しにされがちです。けれど、室内環境を左右する大きな要素でもあります。

・湿気をどう受け止めるか
・においとどう向き合うか
・空気の変化にどう対応するか

素材によって、答えは変わります。
今だけを見るのではなく、10年後の空気を想像してみる。
その視点を持ったとき、自然と「空気と関わる素材」に目が向いていくはずです。

目立たないけれど、確実に暮らしを支えている壁。

素材選びは、未来の室内環境をつくる選択なのです。