においが残りにくい家に共通する3つの特徴

2026/03/02(月) シラス壁コラム


施工・画像提供:株式会社佐保建設(岡山県)

はじめに

家に入った瞬間、「あ、なんだか気持ちいい」と感じることがあります。
特別な香りがするわけではありません。
むしろ、においが“しない”のです。

反対に、玄関を開けたとたん、こもった空気を感じる家もあります。
料理のにおい、生活臭、湿ったようなにおい。住んでいる人は慣れてしまって気づかないこともあります。

この違いはどこから生まれるのでしょうか。

消臭剤や芳香剤の問題でしょうか。
それとも換気の回数でしょうか。

実は、「においが残りにくい家」には、いくつかの共通点があります。今回はその特徴を、暮らしの視点から整理してみます。


そもそも、においはなぜ残るのか

においは、目に見えない小さな粒のようなものです。
料理の湯気、汗、ペット、洗濯物の生乾きなど、生活の中でさまざまなにおいが生まれます。
それらは空気中をただよい、やがて壁や天井、カーテン、家具などに付着します。

問題はここからです。
空気が動かず、湿気が多い状態が続くと、においの成分はその場にとどまりやすくなります。
さらに湿気が加わると、カビや細菌が発生し、別のにおいを生み出すこともあります。

つまり、においの正体は「空気のよどみ」と「湿気」と深く関係しているのです。


特徴1 空気がゆるやかに動いている

においが残りにくい家の一つ目の特徴は、「空気が動いていること」です。
といっても、風が強く吹き抜けるという意味ではありません。ゆるやかに、絶えず空気が入れ替わっている状態です。

最近の住宅は気密性が高くなっています。これは冷暖房の効率を上げるために大切なことです。
しかし、空気まで閉じ込めてしまうと、においは外へ逃げにくくなります。
そのために必要なのが、計画的な換気です。24時間換気システムを正しく使うことや、空気の通り道を確保することが重要です。

ただし、ここでひとつ誤解があります。
換気さえしていれば、すべて解決するわけではないのです。


特徴2 湿気がたまりにくい

においと湿気は切り離せません。
たとえば、同じ料理でも、湿度の高い日に作るとにおいが強く残ることがあります。
雨の日に洗濯物を部屋干しすると、生乾きのにおいが出やすいのもそのためです。

湿度が高いと、においの成分が空気中にとどまりやすくなります。さらにカビや細菌が増えやすくなり、別のにおいを生みます。
湿気がたまりにくい家は、それだけでにおいが残りにくくなります。

ここで大切なのは、「エアコンの除湿」だけに頼らないことです。
エアコンは空気中の水分を減らします。けれど、壁や天井、床の内部に入り込んだ湿気までは直接取り除けません。
もし壁の中に湿気がたまれば、時間とともににおいの原因になることがあります。

だからこそ、湿気を閉じ込めるのではなく、うまく調整できる家が理想です。


特徴3 素材そのものがにおいをため込みにくい

三つ目の特徴は、少し見落とされがちな点です。
それは「素材の性質」です。

においは壁紙や塗装の表面に付着します。表面がつるつるした素材でも、目に見えない細かな凹凸があります。
その素材がにおいを吸い込みやすいかどうかで、残り方は変わります。
たとえば、ビニールクロスは手入れがしやすい反面、湿気を通しにくい性質があります。
そのため、表面に付着したにおいがとどまりやすい場合があります。

一方で、素材の中に無数の小さな孔(あな)を持つものは、においの成分を吸着し、空気中の濃度を下げる働きを持つことがあります。
ここが、においが残りにくい家の大きな違いです。


「消す」のではなく「整える」という考え方

におい対策というと、消臭剤や芳香剤を思い浮かべる人が多いかもしれません。
もちろん、それらも一つの方法です。
しかし、強い香りで上書きするのではなく、においの元をゆるやかに減らしていく方法もあります。
それは、空気を整える素材を使うという考え方です。
派手ではありませんが、毎日の暮らしの中でじわじわと効果を感じられます。


無機質の多孔質素材という選択肢

においを吸着し、湿気を調整する性質を持つ素材のひとつに、シラスを原料とした壁材があります。
シラスは、九州地方に堆積している火災流噴出物のうち、主に約2.7万年前の姶良カルデラの噴火によって発生した入戸火砕流を起源とする、白色~白灰色で砂状の自然素材です。

この素材は、目に見えないほど小さな孔を無数に持っています。
その多孔質構造によって、湿気を吸ったり放したりします。
さらに、におい成分を吸着する働きもあります。
無機質の素材であるため、腐食しにくく、燃えにくいという特徴もあります。

特別な香りを出すわけではありません。けれど、空気を静かに整える力を持っています。


完璧な家はない

もちろん、どんな素材にも長所と短所があります。
シラス壁も、強い衝撃で欠けることがありますし、仕上がりは職人の技術に左右されます。
価格も一般的なビニールクロスより高くなることが多いでしょう。
だからこそ、「何を大切にしたいか」が大事です。

とにかく初期費用を抑えたいのか。
将来の張り替えを減らしたいのか。
空気の質を優先したいのか。

正解は一つではありません。


においは、暮らしの記憶でもある

においは、生活の積み重ねでもあります。

焼き魚のにおい。
子どもが汗をかいて帰ってきた日のにおい。
雨の日の湿った空気。

それらをすべて消してしまうのではなく、不快なものだけを減らしていく。
そんな家があってもいいのではないでしょうか。

においが残りにくい家には、

  1. 空気がゆるやかに動いている
  2. 湿気がたまりにくい
  3. 素材が空気を整える力を持っている

という共通点があります。
目立たない部分ですが、毎日深呼吸するたびに違いが出ます。


まとめ

においが残りにくい家は、特別な機械や強い香りに頼っているわけではありません。

空気の流れ。
湿気の扱い方。
そして、素材の性質。

その積み重ねが、空間の印象を決めています。

家づくりを考えるとき、間取りや設備と同じように、「空気はどう整えられているか」という視点を持ってみる。
その先に、においがこもりにくい、気持ちよく深呼吸できる住まいがあります。
派手さはありませんが、静かに暮らしを支える素材があることを、心の片隅に置いておいていただけたらと思います。

10年後、20年後。
帰宅して玄関を開けたとき、「なんだか、この家は気持ちいい」と感じられる。

そんな空間をつくるのは、目に見えにくい部分の積み重ねかもしれません。


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