漆喰や珪藻土とどう違う?シラス壁の独自性を徹底比較

2025/12/15(月) シラス壁コラム

はじめに

家づくりの資料を見ると、「自然素材の壁」として 漆喰(しっくい)珪藻土(けいそうど)、そして シラス壁 の名前がよく並んでいます。
どれも“体にやさしい壁”として紹介されるので、「結局どれを選べばいいの?」と思ったことがある人も多いはずです。

このコラムでは、3つの素材を性質・使われ方・メリットとデメリットの面から比較し、特に シラス壁がなぜ特徴的なのかを、わかりやすい言葉で説明していきます。


そもそも「シラス壁」って何?

まずはここから。
シラス壁の“シラス”とは、2.5万年前の火山噴火による巨大火砕流で堆積した火山噴出物のことです。

このシラスを細かくし、特別な方法で固めて壁材にしたものが「シラス壁」。
つまり 自然にある素材を、そのままうまく生かした壁なんです。

一方で、漆喰や珪藻土は「自然素材」ではあるものの、実際には接着剤や固化剤を混ぜて使うことが多いため、純度という意味ではシラスとは少し違います。


3つの壁材の“成り立ち”を比べてみる

ここでは、それぞれがどんな材料からできているのかを簡単に整理します。

● 漆喰(しっくい)

漆喰は、石灰石を焼いて粉にした“消石灰”が原料です。
江戸時代の蔵の白い壁を思い出すとイメージしやすいでしょう。
そこに スサ(わらの繊維) を混ぜて壁に塗ります。
特徴としては、空気中の二酸化炭素を取り込みながらゆっくり固まるという、ちょっとおもしろい性質があります。

● 珪藻土(けいそうど)

珪藻(けいそう)という昔の植物プランクトンの殻が積もってできた土を使います。
ミクロで見ると、小さな穴が無数に空いたスポンジのような構造をしていて、この穴が“湿気を吸ったり吐いたりする”力になります。
ただし、珪藻土そのものでは固まりにくいため、実際の壁材では 接着剤や化学樹脂を混ぜて固めることが一般的です。

● シラス壁

原料は 火山噴出物(シラス)と自然素材。
特に有名なのは九州南部のシラスで、無数の微細な穴が空いた多孔質な構造を持っています。
シラス壁の特徴的なところは、マグマが急冷固化して高純度無機セラミック物質であるというところです。


「調湿力」の比較:湿気を吸う力が強いのはどれ?

「調湿」とは、湿気が多いときは吸い込み、乾燥しているときは放出して室内の湿度を一定にする働きのことです。

● 漆喰

漆喰は固まると表面が緻密(ちみつ)なので、吸湿力は弱めです。ただし表面に微細な穴はあるため、まったく吸わないわけではありません。

● 珪藻土

珪藻土はスポンジのような穴があり、調湿力が高いと言われます。
ただし、市販品は接着剤で穴がふさがれてしまうこともあり、実力は商品によって差があります。

● シラス壁

シラスの粒は 多孔質 で、マグマが急冷固化されている為、強度は保ちつつ穴は生かされます。
湿度に応じて、湿気を吸収・放湿する為「呼吸する壁」らしさが強い素材です。
体感ベースでいうと、「梅雨の時期のじめじめが少しラクになる」と感じる人が多いようです。


「空気のきれいさ」への影響

● 漆喰

漆喰はアルカリ性が強く、カビが生えにくいというメリットがあります。ただし、空気中のニオイ成分を分解する力はあまり期待できません。

● 珪藻土

珪藻土もニオイ成分を吸着する働きがありますが、吸い続ける性能が弱まるのが一般的です。ただし、特別加工や特別な配合によって、ニオイ分子を分解すると説明している商品もあります。

● シラス壁

シラスは、
・ニオイの成分
・化学物質(例:ホルムアルデヒド)
などを吸い込み、分解する力があると言われています。ただし、そのメカニズムはまだ解明されていません。
空気を「きれいに保つ」という意味では、自然素材の中でも独自の働きを持っている素材です。


「メンテナンス性」を比較

● 漆喰

表面が硬く丈夫で、手でこすっても粉が落ちにくいのが特徴。長持ちします。ただし、強い衝撃で割れることがあり、補修には専門の技術が必要です。

●珪藻土

やや柔らかく、指で強く押すと跡がつく商品もあります。粉が落ちやすいという声もあり、場所を選ぶ素材と言えるかもしれません。

● シラス壁

漆喰ほど硬くはありませんが、粉が落ちにくく、ほどよい強さがあります。自分で補修キットを使って直すことも比較的簡単です。


デザイン性:見た目や質感の違い

● 漆喰

つるっとした白い壁が特徴で、光が当たると柔らかく反射する美しい素材。古民家・和風建築、シンプルモダンなインテリアとの相性が良いです。

● 珪藻土

ざらっとした質感で、ナチュラルな雰囲気。色のバリエーションも豊富です。

● シラス壁

さらっとした独特のマットな質感。
無機顔料による色味なので、人工的な光沢がありません。
太陽光の下で反射が少なく、部屋の明るさが落ち着いて感じられるのも特徴です。


価格帯の違い

一般的な傾向としては、漆喰 → 珪藻土 → シラス壁の順で高めになりやすいです。

ただし、塗り方(左官職人の技術料)やブランド、厚みなどによって差が大きく、「すごく高い珪藻土」もあれば「比較的手頃なシラス壁」もあります。


3つの素材をわかりやすく例えると…

少し視点を変えてみましょう。
3つの壁材を、身近な“もの”に例えるとこんなイメージになります。

●漆喰 

白い陶器のような壁
つるっときれい、長持ちするけど割れることもある。

●珪藻土

乾燥剤のような壁
ニオイを吸うが、吸いすぎると限界が来る。

●シラス壁 

呼吸し生きているような壁
湿気もニオイも吸い取り、分解もしつつ丈夫さもある。


シラス壁が「独自性が高い」と言われる理由

ここまで読んで、シラス壁の良さが少し見えてきたかもしれません。
まとめると、シラス壁の独自性は大きく次の2点です。

① 原料が“火山由来”という珍しい素材

シラスという大規模な火山活動の副産物を、そのまま建材にしている素材は珍しく、自然素材の中でも個性がとても強いです。

② 水分やニオイの調整

スポンジのような多孔質のおかげで、

・湿気を「吸湿・放湿」
・ニオイを「吸って分解する」

という性質があります。


どんな人に向いている素材なのか?

最後に、3つの素材の向き不向きを整理してみましょう。

● 漆喰が向いている人

・和風・クラシックな雰囲気が好き
・白くてつるっとした壁が好み
・メンテナンス性の高い素材がいい

● 珪藻土が向いている人

・ナチュラルな質感の家が好き
・価格と性能のバランスを重視
・ザラッとした柔らかい雰囲気が好き

● シラス壁が向いている人

・室内の空気をできるだけ自然で心地よく保ちたい
・梅雨のじめじめや生活臭が気になる
・自然素材を“素材そのものの力”で使いたい
・人とは違う素材で空間づくりをしたい


まとめ:比べるほど見えてくるシラス壁の個性

漆喰・珪藻土・シラス壁は、どれも自然素材の壁として知られていますが、その成り立ちや特徴は意外と違います。

とくに シラス壁は「火山の恵みをそのまま生かした壁」 という点で独自性があり、

・調湿
・消臭
・空気改善

など、生活の中で感じる“空気の質”にこだわりたい人に向いています。

家の壁材選びは、単なるデザインではなく、日々の心地よさに直結する部分です。
この記事が、自分に合う素材を選ぶきっかけになれば幸いです。


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