自然素材住宅は本当に手間がかかるのか?
施工・画像提供:株式会社佐保建設
はじめに
「自然素材の家は手間がかかる」
住宅を検討すると、必ず一度は耳にする言葉ではないでしょうか。
たとえば、
・無垢の床は傷がつきやすい
・漆喰や土壁はひび割れる
・メンテナンスが大変そう
このようなイメージから、自然素材の家に興味があっても「少し大変そうだな」と感じてしまう方も少なくありません。ですが実際のところ、自然素材の住宅は本当にそんなに手間がかかるのでしょうか。
今回はこの疑問について、できるだけ分かりやすく考えてみたいと思います。
実際には、「自然素材=手間がかかる」と言われる理由の多くは、素材そのものではなく使い方やイメージによるものです。素材の特徴を理解して使えば、自然素材の家が特別に大変になるとは限りません。
自然素材住宅が「手間がかかる」と言われる理由
自然素材の家が手間がかかると言われる理由のひとつは、「自然のままの素材を使う」という特徴にあります。
たとえば、木を思い浮かべてみてください。
本物の木は、季節によって少し伸びたり縮んだりします。
湿気を吸ったり吐いたりもします。
これは欠点のようにも見えますが、実は木が生きている素材だからこそ起こることです。
自然素材の多くは、このように呼吸する素材とよく表現されます。
・湿気を吸ったり吐いたりする
・温度によってわずかに動く
・時間とともに風合いが変わる
つまり、工業製品のように「ずっと同じ状態」でいる素材ではありません。
この変化を「面倒」と感じるか、「味わい」と感じるかで、自然素材への印象は大きく変わります。
実は、昔の家はみんな自然素材だった
ここで少し考えてみてください。昔の日本の家はどうだったでしょうか。
・木の柱
・土壁
・和紙
・畳
今でいう「自然素材」ばかりでできていました。
それでも、何十年、時には100年以上使われてきた家がたくさんあります。
もちろん昔の人も、家の手入れをまったくしていなかったわけではありません。特別に難しいメンテナンスをしていたわけでもありません。
むしろ自然素材の家は、日々の暮らしの中で自然に付き合っていくものでした。
つまり、自然素材=特別に大変というわけではないのです。
問題は「素材の性質を知らないこと」
自然素材でトラブルが起こる場合、その多くは素材の性質を知らずに使ってしまうことです。
たとえば、
・湿気に弱い場所に使う
・素材に合わない施工をする
・化学素材と無理に組み合わせる
こうしたことが原因で問題が起こることがあります。
逆に言えば、素材の特徴を理解して使えば、自然素材はとても優れた性能を発揮します。
たとえば自然素材には、次のような特徴があります。
・室内の湿度を調整する
・空気中のにおいを吸着する
・静電気が起きにくい
・肌ざわりが良い
これは、人工素材ではなかなか再現できない性質です。
壁材によって「手間」は大きく変わる
自然素材の家を考えるとき、意外と重要なのが壁材です。
壁は、家の中で最も広い面積を占める部分です。
つまり、壁の素材によって室内環境は大きく変わります。
自然素材の壁材としてよく知られているものには、次のようなものがあります。
・漆喰
・珪藻土
・土壁
どれも魅力的な素材ですが、それぞれに特徴があります。
たとえば素材によっては、
・ひび割れが起きやすい
・表面の粉が落ちることがある
・汚れがつきやすい
といった点が気になる場合もあります。
こうした理由から「自然素材の壁=扱いが難しい」というイメージを持つ方もいるのです。
自然素材でも扱いやすい壁材がある
しかし最近では、自然素材でありながら扱いやすい壁材も登場しています。
その中でも注目されているのが、「シラス」を使った壁材、いわゆるシラス壁です。
シラスとは、九州南部に広く分布している火砕流堆積物です。約2万7000年前、姶良カルデラの大噴火によって生まれた自然素材です。
このシラスは非常に細かい粒子でできており、内部には無数の小さな穴が空いているのが特徴です。
この微細な穴が、湿気やにおい成分を吸着する働きを生み出します。
そのためシラス壁には、さまざまな機能が生まれます。
例えば、
・室内の湿度を調整する
・生活臭やペット臭などのにおいを吸収する
・シックハウスの原因となる化学物質を吸着する
といった性能です。
シラス壁は、自然素材でありながら機能性も兼ね備えた壁材と言えるのです。
「手間がかからない家」と「長く住める家」
家づくりでは、「手間がかからないこと」が重視されることがあります。
確かに、何も気にせず使えることは便利です。
しかしその一方で、
・数十年で張り替えが必要になる
・化学物質が増える
・室内の空気環境が悪くなる
といった問題が起こる場合もあります。
自然素材の家は多少の変化はありますが、その代わりに長く使える素材が多いのも特徴です。
そして何より、住んでいる人が心地よく感じる空間をつくりやすいのです。
まとめ|自然素材の家は「付き合い方」が大切
結局のところ、自然素材の住宅は「手間がかかる家」ではなく「素材と上手に付き合う家」と言えるかもしれません。
素材の特徴を理解し、その性質に合った場所に使う。
それだけで、自然素材の魅力は大きく引き出されます。特に壁材のように、室内の空気環境に大きく関わる部分では、素材選びがとても重要になります。
自然素材にはさまざまな種類がありますが、その中にはシラス壁のように、自然素材でありながら機能性を兼ね備えた素材もあります。家づくりを考えるとき、「手間がかかるかどうか」だけで判断するのではなく、素材が持つ本来の力にも目を向けてみてください。壁や床など、家の多くの面積を占める素材を見直すだけでも、住まいの快適さは大きく変わることがあります。
自然素材の家は、ただの「素材」ではなく、暮らしの環境そのものをつくるものなのです。
![]() |
![]() |

