素材選びで変わる「家のにおい」の経年変化

施工・画像提供:株式会社木の家専門店 谷口工務店
はじめに
家には、それぞれ独特の「におい」があります。
玄関を開けた瞬間に感じる、あの空気です。
その家に住んでいる人はあまり気づきませんが、訪れた人は意外と感じ取るものです。
「木の香りがして気持ちいい家」
「少し湿った感じがする家」
「生活のにおいが残っている家」
家のにおいは、暮らし方だけで決まるわけではありません。
実は、家づくりのときに選んだ「素材」が、10年後の空気の心地よさを左右します。
今回は、家のにおいと素材の関係についてわかりやすく解説します。
新築の家のにおいの正体とは?
新築の家に入ったとき、「新築のにおい」を感じたことがある人は多いと思います。
あの独特の匂いは、木の香りだけではありません。
実際には、さまざまな建材のにおいが混ざっています。
例えば、次のようなものです。
・接着剤
・塗料
・壁紙の素材
・合板などの建材
こうした材料から出る成分が空気に混ざり、「新築のにおい」として感じられます。
最近は安全基準も厳しくなり、昔よりずっと安心な材料が使われるようになりました。
それでも、人工的な素材が多い家では、時間とともに空気の質が変化することがあります。
例えば、こんな経験はないでしょうか。
・クローゼットを開けたときのこもった匂い
・雨の日に強く感じる部屋のにおい
・ペットや料理の匂いが残る感じ
こうした現象は、実は湿気と素材の性質が大きく関係しています。
家のにおいは「湿気」で大きく変わる
においの多くは、空気中に漂う小さな分子です。この分子は、湿度と深く関係しています。
湿度が高いと、
・においが広がりやすい
・空気が重く感じる
・カビや菌が増えやすい
という状態になります。
反対に、湿度が適度に保たれていると、
・空気が軽く感じる
・においが残りにくい
・室内がさっぱりする
といった変化が生まれます。
つまり、家のにおいを左右する大きな要素は湿気なのです。
そして、この湿気の調整に深く関わっているのが、実は「壁」です。
家の空気を左右するのは「壁材」
家の中で最も広い面積を占めている部分はどこでしょうか。
床や天井を思い浮かべるかもしれませんが、実は一番広いのは壁です。
つまり、壁の素材は空気の状態に大きく影響します。
現在の住宅でよく使われているのは、ビニールクロスと呼ばれる壁紙です。
ビニールクロスには
・施工しやすい
・汚れを拭き取りやすい
・コストが比較的安い
といったメリットがあります。
ただし、表面がビニールで覆われているため、湿気や空気を通しにくい性質があります。
そのため、
・湿気がこもりやすい
・においが部屋に残りやすい
という状況になることがあります。この点で、自然素材の壁は少し違います。
自然素材の壁は「呼吸する」
昔の日本の家では
・土壁
・漆喰
・木
などの自然素材が多く使われていました。
これらの素材には共通点があります。それは、目に見えない小さな穴がたくさんあることです。
この細かな穴によって、
・湿気を吸ったり放したりする
・においの成分を吸着する
といった働きが生まれます。いわば、壁が呼吸しているような状態です。
この働きがあると、部屋の湿度が自然に調整され、空気がこもりにくくなります。
結果として、家のにおいも変わってきます。
火山が生んだ自然素材「シラス」
こうした自然素材の中で、最近注目されているもののひとつに「シラス」を使った壁材があります。
シラス壁の「シラス」とは、九州南部に広く堆積している火砕流堆積物のことです。
主に約2.7万年前、姶良カルデラ(現在の錦江湾奥部)の大噴火によって生まれた入戸火砕流が起源とされています。
白色~白灰色の砂状の自然素材で、九州南部では「シラス台地」として広く知られています。
このシラスの粒子を拡大して見ると、とても特徴的な形をしています。粒の表面には、無数の小さな穴があいているのです。
この構造によって、
・におい成分を吸着する働きがある
・湿気を調整する
・除菌・抗ウイルス効果が確認されている
といった働きが生まれます。
そのため、シラスを使った壁は、空気を整える素材として住宅で使われることがあります。
家のにおいは「10年後」に差が出る
家の素材の違いは、すぐには分かりません。新築のときは、どの家もきれいで空気も新鮮です。
しかし、5年、10年と暮らしていくと、少しずつ違いが出てきます。
例えば、ある家では
・湿気がこもりやすい
・においが残りやすい
・空気が重く感じる
一方で、別の家では
・空気が軽く感じる
・生活臭が残りにくい
・部屋がさっぱりしている
こうした違いの一つに、壁材の性質があります。
湿気を調整し、においを吸着する素材は、長い時間の中で少しずつ空気の状態を整えていきます。
「空気が気持ちいい家」は素材がつくる
家に入った瞬間、
「なんか空気が気持ちいいね」
と感じる家があります。
でも、その理由を言葉にするのは意外と難しいものです。
温度でもなく、湿度でもなく、なんとなく空気が軽い感じ。
実はこうした感覚は、
・湿度のバランス
・においの少なさ
・空気の質
などが整っているときに生まれます。
そして、それを支えているのが、家の素材です。
家づくりで意外と見落とされる「空気」
家づくりでは、
・間取り
・デザイン
・設備
に目が向きがちです。もちろんどれも大切です。
しかし、長く暮らしてみると、毎日感じるのは空気の心地よさだったりします。
毎日呼吸する空気。
毎日感じる部屋のにおい。
こうしたものは、住み始めてからずっと続いていきます。
だからこそ、家づくりでは「どんな素材を使うか」という視点も、実はとても重要になってきます
まとめ|家のにおいは、素材と暮らしがつくる
家のにおいは、生活によって変わります。
料理の香り。
季節の湿気。
家族の暮らし。そこに、素材の働きが加わります。
湿気を整える素材。
においを吸着する素材。
空気を整える素材。こうした素材は、目立つ存在ではありません。
しかし、長い時間の中で、家の空気を静かに支えています。玄関を開けたときに感じる、あの「家のにおい」。
それは、暮らしと素材が重なり合って生まれる、家の時間の積み重ねなのかもしれません。
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