新築時に見落とされがちな内装材の落とし穴

2026/02/27(金) シラス壁コラム

画像提供・施工:スピークス株式会社(福島県)

はじめに

家を建てるとき、多くの人がまず考えるのは「間取り」や「外観」です。

リビングは広くしたい。
キッチンは対面式がいい。
外壁は明るい色にしたい。

どれも大切なことです。図面を見ながら家族で話し合う時間は、とても楽しいものです。
けれど、完成して住み始めたあと、毎日じわじわと影響してくるのは、実は「内装材」です。
壁や天井、床など、家の内側をつくる素材のことです。

内装材は、毎日目に入り、毎日触れ、毎日その空気の中で暮らします。
それなのに、最後のほうで急いで決めてしまうことが少なくありません。
ここに、見落とされがちな落とし穴があります。


「見た目」と「暮らし」は同じではない

内装材を選ぶとき、多くの人がカタログや小さなサンプルを見ます。

色はどうか。
柄は好みに合うか。
流行に合っているか。

もちろん見た目は大事です。
しかし、小さなサンプルで見る印象と、家全体に使ったときの印象は違います。

とくにビニールクロスは種類がとても多く、選びやすい素材です。
価格も手ごろで、工期も短くてすみます。
そのため、「とりあえずこれでいいか」と決まりやすい素材でもあります。

貼ったばかりのときは、とてもきれいです。
でも数年後、継ぎ目が少し開いてきたり、角がめくれてきたりすることがあります。
家具の裏側だけ黒ずんでいた、という話もよくあります。
家づくりのときには見えない「時間の変化」まで想像するのは、なかなか難しいものです。


内装材は「空気」と関係している

内装材は、見た目だけの問題ではありません。
実は、家の中の空気とも深く関係しています。

日本は湿気の多い国です。梅雨の時期や夏場は、湿度が70%を超えることも珍しくありません。
湿気が多いと、

・カビが生えやすくなる
・においがこもる
・ダニが増える

といった問題が起きやすくなります。

多くの家庭ではエアコンや除湿機を使います。たしかに空気中の水分は減ります。
しかし、壁や天井の内部に入り込んだ湿気までは、直接取り除けません。
もし湿気が壁の中にたまり続ければ、木材はゆっくりと傷み、見えない場所でカビが発生することもあります。
湿気は、体感だけでなく、家の寿命にも関わる問題なのです。


「閉じ込める」か「調整する」か

現代の住宅は気密性が高くなっています。
これは冷暖房の効率を上げるために大切なことです。
しかし、湿気まで閉じ込めてしまうと、別の問題が生まれます。
大切なのは、湿気を完全に止めることではなく、うまく調整することです。

空気中の湿気が多いときは少し受け止め、乾燥してきたらゆっくり放す。
そうした性質を持つ素材は、室内の環境をゆるやかに安定させます。
この働きを「調湿」といいます。

内装材の中には、この調湿性を持つものがあります。


メンテナンスの現実

家は建てて終わりではありません。暮らしが始まってからが本番です。

子どもが壁にぶつかることもあります。
ペットがひっかくこともあります。
家具を動かして傷がつくこともあります。

ビニールクロスは部分補修が難しく、張り替えとなると広い範囲をはがす必要があります。
10年前後で全面張り替え、という例も少なくありません。
そのたびに廃材が出て、工事も必要になります。

最初の価格だけでなく、「この先どうなるか」まで考えることが、素材選びでは大切です。


素材の本質を考える

では、どんな内装材が安心なのでしょうか。
すべてを満たす完璧な素材はありませんが、ひとつの目安として、次のような性質があります。

・湿気をやわらかく調整できる
・においを抑える力がある
・燃えにくい
・劣化しにくい
・化学物質を出しにくい

これらは、派手な性能ではありません。けれど、毎日の暮らしの中で少しずつ効いてきます。

特に壁や天井は、家の中でとても大きな面積を占めています。
だからこそ、素材の違いが積み重なって、空気の質に影響します。


無機質でありながら「呼吸する」壁

調湿性を持つ素材のひとつに、シラスを原料とした壁材があります。

シラスは、九州地方に堆積している火災流噴出物のうち、主に約2.7万年前の姶良カルデラの噴火によって発生した入戸火砕流を起源とする、白色~白灰色で砂状の自然素材です。この素材は、とても細かい穴を無数に持っています。その小さな穴が、湿気を吸ったり放したりします。

さらに、

・無機質なので腐りにくい
・燃えにくい性質を持つ
・におい成分を吸着する

といった特徴もあります。

見た目は素朴ですが、空気の中では静かに働き続けます。
湿気やにおいを調整できる素材のひとつとして、シラスを原料とした壁材があります。


完璧ではないという前提

もちろん、どんな素材にも弱点があります。
シラス壁も、強い衝撃を受ければ欠けることがありますし、仕上がりは職人の技術に左右されます。
価格もビニールクロスより高くなることが一般的です。

だからこそ大切なのは、「何を優先するか」をはっきりさせることです。

初期費用を抑えたいのか。
将来の張り替えを減らしたいのか。
空気の質を大切にしたいのか。

答えは家庭ごとに違います。


10年後、20年後の姿を想像する

家は、完成した瞬間がゴールではありません。
子どもが成長し、生活が変わり、家族の時間が積み重なっていきます。
そのとき、壁はどうなっているでしょうか。

ただ「きれい」なだけでなく、気持ちよく深呼吸できる空間であってほしい。

内装材は、目立たない存在ですが、毎日の空気を支える大切な部分です。


まとめ

新築時に見落とされがちな内装材の落とし穴は、「今の見た目や価格だけで決めてしまうこと」です。
壁や天井は、家の中で最も広い面積を占めています。
だからこそ、空気や湿気、暮らし心地に大きく関わります。

ビニールクロスが悪いわけではありません。
ただ、それ以外の選択肢もあることを知っておくことは大切です。
火山の恵みから生まれたシラス壁のように、静かに空気を整える素材もあります。

家づくりは、一生に何度もあることではありません。
間取りや設備と同じくらい、「内装材」という存在にも目を向けてみる。
その小さな意識の違いが、10年後、20年後の暮らしの質を支えるかもしれません。
家族が何気なく、
「この家、なんだか気持ちいいね」と言える。
そんな時間をつくるのは、目立たない素材の力かもしれません。


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