自然と共生する家へ!シラス壁の可能性を探る
はじめに
最近、「自然素材の家づくり」に関心を持つ人が増えています。その背景には、化学物質による健康への影響や、地球環境に配慮した暮らしを求める声があるからです。木や土など、昔から使われてきた素材を見直す動きが広がっているのです。その中で、特に注目を集めているのが「シラス壁」です。
シラス壁は、九州南部の火山が生んだ「シラス」という白い火山噴出物を原料にした塗り壁材です。まだあまり広くは知られていませんが、その可能性はとても大きいのです。本記事では、シラス壁の魅力や特徴、そしてこれからの家づくりにどう役立つのかを、できるだけわかりやすくお話ししていきます。
シラスってなに?
「シラス」という言葉は、魚のシラスとはまったく別物です。シラスとは、火山の噴火によって流れ出した火砕流が冷えて固まったものが長い年月をかけて堆積したものです。九州南部、特に鹿児島や宮崎に多く分布しています。
このシラスは見た目が白っぽく、サラサラした砂のような質感を持っています。しかし、その中には無数の小さな穴が空いていて、吸湿性や脱臭効果に優れています。つまり、ただの砂のように見えて、実は高機能な素材なのです。
シラス壁の特徴
シラスを使った壁材は、昔ながらの土壁や漆喰と似た「塗り壁」の一種です。けれども、シラス壁には独特の良さがあります。
1. 空気をきれいにする
シラス壁の表面には、顕微鏡でしか見えないほど細かい穴が無数にあります。これが「天然のフィルター」として働き、部屋の中のにおいや有害な化学物質を吸着してくれるのです。たとえば、ペットのにおいやタバコの煙、料理の匂いも和らげてくれます。
2. 湿度を調整する
梅雨の時期に部屋がジメジメする、冬になると加湿器をつけても乾燥してしまう…。こんな悩みは多くの家庭で聞かれます。シラス壁は湿気を吸ったり吐いたりして、部屋の湿度を自然にコントロールしてくれます。これにより、カビやダニの発生も抑えられるのです。
3. 強くて長持ち
土壁や漆喰はヒビが入りやすいことがありますが、シラス壁は火山由来の素材だけあって耐久性が高いのが特徴です。塗ったあとは固く締まり、長い年月が経っても劣化しにくいのです。
4. 自然の色と質感
シラス壁は、合成着色料を使用せずに無機顔料を使用しています。そのため、自然な色味や風合いを持っています。白や淡いベージュ、グレーなど、落ち着いた色合いが多く、光の当たり方によって表情を変えます。塗り方によっても表面の模様が変わるため、同じものが二つとない味わいが生まれます。
他の壁材と比べてどうなの?
家の壁材といえば、ビニールクロス(壁紙)が最も一般的です。では、シラス壁はそれとどう違うのでしょうか。
- ビニールクロスは安価で施工も簡単ですが、湿気を調整する力がなく、汚れやすいという弱点があります。また、接着剤に含まれる化学物質がシックハウス症候群の原因になることもあります。
- 漆喰は歴史のある自然素材で、白く美しい仕上がりが魅力です。ただし施工に技術が必要で、ヒビが入りやすいという面もあります。
- シラス壁は、自然素材でありながら耐久性や機能性が高く、しかも室内環境を快適にしてくれる点が強みです。
つまり、「自然素材の良さ」と「現代の暮らしに合った機能性」を兼ね備えているのがシラス壁なのです。
実際に住んでみると?
シラス壁を取り入れた家に住んでいる人の声を聞くと、「部屋の空気が澄んでいる感じがする」「梅雨でもカビ臭くならない」「食べ物のニオイが気ならない」といった感想が多く聞かれます。ペットを飼っている家庭では、「動物のにおいが気にならなくなった」という声もあります。
さらに、シラス壁は見た目の雰囲気も良いため、リラックスできる空間づくりにも一役買っています。自然の素材に囲まれることで、どこかホッとする気持ちになるのです。
環境へのやさしさ
現代の家づくりでは「環境にやさしい」という視点も重要です。シラス壁は、産地から採れる自然素材をそのまま利用しており、製造過程で大きなエネルギーを必要としません。また、化学物質を含まないため、廃棄するときも環境への負荷が少ないのです。
つまり、シラス壁は「人にやさしい」だけでなく「地球にやさしい」素材でもあるのです。
注意点はある?
もちろん、シラス壁にもデメリットはあります。たとえば、施工には職人の技術が必要なので、ビニールクロスよりも初期費用は高くなります。また、壁にぶつけると表面が欠けることもあります。ですが、部分的な補修が可能で、一度塗れば長持ちするため、長い目で見るとコストパフォーマンスは悪くありません。
これからの家づくりとシラス壁
これからの住宅は、「快適さ」「健康」「環境配慮」の三つが大きなテーマになるでしょう。その中で、シラス壁はこれらをすべて満たす可能性を持っています。
- 快適さ → 湿度や空気を自然にコントロール
- 健康 → 化学物質に頼らず、安全な空間をつくる
- 環境配慮 → 自然素材でエコロジー
つまり、シラス壁は「人と自然が共生する家づくり」の象徴とも言えるのです。
まとめ
シラス壁は、まだ一般的には知られていないかもしれません。しかし、その機能性やデザイン性、そして人と環境にやさしい特性を考えると、これからの住宅にぴったりの素材です。シンプルに言えば、「シラス壁は家の空気をきれいにし、住む人を健康にして、地球にもやさしい壁」なのです。
家づくりを考えるとき、「壁」というのは意外と注目されにくい部分です。でも、家の中で私たちが一番触れて、目にするのは壁かもしれません。だからこそ、そこにどんな素材を使うかはとても大切です。もし「自然と共生する暮らし」を目指すなら、シラス壁は強い味方になってくれるでしょう。
![]() |
![]() |