古民家再生にもピッタリ！シラス壁を活用した和モダン空間

はじめに

昔ながらの古民家に、どこか懐かしさを感じる人は多いのではないでしょうか。太い梁や柱、土間、障子。そんな日本の伝統的な住まいを、現代の暮らしに合うように再生する「古民家リノベーション」が、今とても注目されています。

中でも、見た目の美しさだけでなく、健康や環境にも配慮した「シラス壁（しらすかべ）」を取り入れた和モダンな空間づくりが、静かに広がっています。今回は、シラス壁とはどんな素材なのか、なぜ古民家再生と相性がいいのか、その理由をわかりやすくお伝えします。

シラス壁は、「シラス」と呼ばれる火山噴出物を使った自然素材の壁材です。日本では特に九州地方で多く産出され、数万年〜数十万年前の火山活動で噴き出したもので、細かい粒子の灰や軽石のような成分が含まれています。

このシラスを独自の技術で加工し、左官材（塗り壁の材料）として使えるようにしたのが「シラス壁」です。見た目は、ほんのり温かみのあるマットな質感。自然素材ならではのやさしい風合いが、和の空間にぴったりなんです。

古民家には、木材や土壁など、昔ながらの自然素材が多く使われています。だからこそ、そこに新しく使う材料も、できれば同じように「自然のもの」が望ましい。シラス壁は100％自然素材なので、既存の建材と無理なくなじみます。

また、古民家特有の木の色合いや風合いとシラス壁のマットな質感がよく合い、空間に落ち着きと品のある統一感を生み出してくれます。

古民家は、現代の住宅と違って気密性が低い反面、通気性に優れており、「呼吸する家」ともいわれます。その通気性を活かすには、壁材にも湿度のコントロール機能があると効果的です。

シラス壁は、湿気を吸ったり吐いたりする「調湿機能」がとても高く、ジメジメした夏でも空気がサラッと感じられます。梅雨の時期でも、いやな結露やカビを抑える効果があるので、古民家の良さをさらに引き立ててくれます。

古民家を再生する際に、意外と気になるのが「におい」。長年の生活臭や湿気のにおい、土や木の独特な香りが残っていることもあります。

シラス壁には、においの元になる成分を吸着・分解する力があり、脱臭効果にもすぐれています。特に、たばこ臭やペットのにおい、生ごみのにおいなど、日常生活で発生するさまざまなにおいを抑えてくれるのはうれしいポイントです。

シラス壁は、色や仕上げのバリエーションが豊富です。たとえば、白や生成り色のシンプルな壁にすると、空間が明るく清潔感のある印象に。逆に、濃いグレーや土色系の色合いを選べば、重厚感のある落ち着いた雰囲気になります。

また、左官職人さんの手仕事によって、さまざまなパターンの仕上げが可能です。波模様のような「なで仕上げ」、手の跡を残したような「引きずり仕上げ」、そして現代的なフラット仕上げまで、自分たちの好みに合わせてオリジナルの空間づくりができるのです。

木の梁や古い建具と組み合わせることで、和の雰囲気を残しつつも、どこか現代的でスタイリッシュな「和モダン」の空間が生まれます。

古民家を再生して住む人の中には、小さなお子さんがいるご家庭や、親と同居する方も多いと思います。そういった家族構成で気になるのが「室内の空気環境」。

シラス壁には、化学物質を使わないという特長があります。ホルムアルデヒドなどの有害な成分を出すことがないので、アレルギーや化学物質過敏症の心配が少なく、安心して暮らすことができます。

さらに、先ほども触れたように、湿度を調整したり、においを抑えたりする働きもあるので、空気が清らかに保たれるのも大きなメリットです。

近年、持続可能な暮らしや地球環境への配慮がますます重要になっています。その点でも、シラス壁は優れた選択肢です。

まず、シラスは大量に存在する自然の資源で、採取しても環境にほとんど負荷をかけません。さらに、製造過程でも高温で焼成する必要がないため、CO₂の排出が少なく、エネルギー消費を抑えられます。

また、廃棄する際も土に還る素材なので、処分に困ることがなく、まさに「自然に戻る素材」。人にも地球にもやさしい壁材だといえるでしょう。

古民家再生は、ただ古い家を直して住むということだけではありません。そこには、昔の人の知恵や暮らしの工夫を現代につなげるという意味も込められています。

シラス壁は、そんな古民家の良さを残しつつ、今の時代に合った快適さやデザイン性、そして健康的な暮らしをもたらしてくれる素材です。自然素材ならではのやさしさに包まれた空間で、家族がのびのびと過ごす――そんな住まいのかたちを、シラス壁とともに考えてみませんか？