「2つの庭の家」

有限会社 HIRO建築工房

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1. 自然素材に対する思い

近年 建築は環境と常に考える必要性が高まっている。その中で、太陽光発電パネルや気密性能、断熱性能といった建築に付加する設備的な内容が求められ、数値的な判断によって環境がとらえれている傾向にある。一方で、日射や通風といった自然環境に近づきながら、元来からある快適な環境を手に入れることに、まだまだ可能性を感じる。人を取り巻く家の部位が部品となり、近代化 工業化され進化していった。しかし、もう一度振り返り 自然素材を使用することで、違う視点での価値観を感じられるのでは。施工技術による仕上がりの違い、表情の違い。それこそ、製品が一番苦手とするところである。
壊れにくくなっても飽きてしまって解体される家。経年変化は、味わいを持たせ、飽きさせず使い続けることを思わせる。そのことが、住宅寿命を伸ばし、サスティナブルへつながっていく。そんな橋渡しの可能性を自然素材は持っていると思う。

2. 作品データ

作品名:2つの庭の家
建設場所 : 群馬県沼田市
建築面積 : 107.03㎡
延べ床面積 : 153.76㎡
竣工年月日 : 平成25年12月

3.作品コンセプト

お寺の境内の中に、家をつくりたい。そんな住職からの話からはじまった。400年続くこのお寺の中に建てると言う事は、やはりその廻りの建物との共存が前提となる。まずは、そのお寺としてのあり方や考え方から検討を始めた。その昔 お寺は寺子屋など人の集うところであった。集まることで、地域の交流が生まれ、活動の拠点となっていた。現在 お寺は葬儀をするのみの場所となりつつある。住職としては、昔のような多くの地域の方が集まる場所にしたい、その一つの施設として、家を計画して欲しいといわれた。家つくりを単なるプロセスと考えるのではなく、その工事自体もお寺に人を呼ぶキッカケにしようと考えた。まず、工事をする職人は、お寺関係者を問わず、地元地域から集めた。この工事だけのための寄せ集めの職人で、どこまで工事できるか心配もあった。しかし、予想は外れ 各職方が、選ばれた責任をしっかりと持ち、役割をしっかりと果たした。地元地域の職人でつくったことで、近隣ではうわさとなり、完成時には多くの見学者が訪れた。また、このお寺は、毎月 落語家さんなどを集め、檀家さんはじめ地域の人を招いて交流を行っている。多様な来客があり、ゲストルームを併設することも望まれた。見学から訪れるゲストに対し、お寺の風景に馴染むこの機の家は、癒しの空間となるように考えた。

4.採用材料・仕上げ

そとん壁 (三条大波仕上げ)

5.採用の工夫

周辺の歴史ある本堂や庫裡、庭園など、それらと調和しお互いをよりよく見えるそのような素材えらびが進められた。当然木質を多用することもあるが、耐久性からその他の素材を探し、「そとん壁」が選ばれた。「そとん壁」自体は新しいものであるが、表情は周辺の古いものにとても馴染みが良く、耐久性もしっかりしていて後世に残すことができるとの判断で採用を確定した。

6.本作品におけるシラス壁の役割

■この家の顔であり、表情である。時間変化も重要だが、経年変化も自然素材ならではの良さがある。
■強さと優しさの表情。

7.シラス壁への思い

設計者となる以前、現場監督を10年していた。作られるもののクオリティーをそろえるため、常に意識と苦労をしていた。同じものができる期待と安心。しかし、進んでいく職人、技術者不足。同クオリティーを確保するために、規格、既製品を考えることが増えた。工業化や生産システムが確立した現在、同じクオリティーが手に入れやすくなった。反面、異なるクオリティーに価値や味を感じる。その場所やその時にしかできない、出来上がった表情に価値を感じる。また、今後減っていく職人のため、作れなくなっていく貴重な仕上げ表情。後世に存在した職人技術として残していく価値がある。
お施主さん、設計者、職人さんがその壁を塗った瞬間や思い出を残す 「記憶装置」であると考える。

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